2017年02月18日

次世代を育てる医療にとって大切な役割

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08年には妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師・専門薬剤師制度が制定されました。しかし、本制度の普及は、なかなか広がりをみせていません。次世代を育てるということは、医療にとって大切な役割の一つです。本制度の有資格者が増えることは、今後、多くの命が救われることにつながるでしょう。

■救えたかもしれない命があります

近年、より一層深刻さを増す少子化問題。女性の社会進出に伴う晩婚化や晩産化などが主な要因とされていますが、一方で妊娠しても諸般の事情で出産を諦めてしまう人も少なくありません。「胎児に悪影響を与えるため、妊婦は薬を飲んではいけない」――このような先入観から、医療関係者に相談することなく出産を諦めてしまうケースが存在しています。

例えば、持病の薬を恒常的に服用しているため、妊娠、出産を諦めようとしている女性や、妊娠していることを知らずに薬を飲んでしまい、中絶を考えている女性たちがそれに当たります。一般の調剤薬局やドラッグストアなどで気軽に専門知識をもった人に相談することが出来たら、救えたかもしれない命です。

■次世代を育てる医療にとって大切な役割

こうした状況を改善するため、厚生労働省は2005年に「妊娠と薬情報センター」を開設し、妊娠中もしくは妊娠を計画中の女性を対象に、薬に関する相談を始めました。現在では、全国29ヵ所の病院に相談窓口があります。

また、08年には妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師・専門薬剤師制度が制定されました。しかし、本制度の有資格者数はいまだ約100人に留まっています。今後、一般の調剤薬局やドラッグストアでも、妊婦や授乳婦からの相談は増加すると思われます。

次世代を育てるということは、医療にとって大切な役割の一つです。本制度の有資格者が増えることは、今後、多くの命が救われることにつながるでしょう。

■インフォームドチョイスという考え方

この領域においては、通常の薬剤師業務と大きく異なり、ただ正しい真実を伝えればよいだけでなく、インフォームドチョイスという考え方を基本におかなければなりません。一般的な服薬指導は「患者さんが抱える疑問を解決すること」「薬に関する情報を患者さんに教えること」ですが、妊婦や授乳婦のカウンセリングにおいては、指導する側から出産を強く勧めたり、逆に出産に反対することはせず、患者さんと家族にとってのメリットは何かという点を、十分に話し合い、最終的に患者さんと家族の選択を尊重します。

重要なのは「命に関わる問題にうまく配慮しながらリスクコミュニケーションをとる」スキルです。患者さんと生まれてくる赤ちゃんの双方のメリットにつながる治療を医師と共有したうえでリスクコミュニケーションをとる必要があります。