高齢化が進み、ますます重要になる緩和医療
平均寿命が延びている日本において、在宅医療で家族に見守られながら静かに末期を迎えることが求められています。この時大切なのが、がんなどの病気の痛みを取り除き、いかに安らかに過ごせるかという点です。このような背景から、緩和医療の重要性が高まってきています。
在宅医療で必要とされる緩和医療以前は、大病を患った場合、病院で息を引き取るのが一般的でしたが、最近では長期間の入院を勧められることは少なく、自宅や介護施設でなくなるケースが増えてきました。手術や放射線治療を終え、これ以上の積極的な治療を行わない場合、地域の在宅医に診てもらいながら在宅医療を行う患者も増えています。
とくに、がんを患っている患者は、その痛みに悩まされている人も多く、在宅医療では痛みを取り除く「緩和医療」がポイントとなってきます。緩和医療では、痛みを和らげたり炎症を抑える効果がある薬物を使用するため、緩和医療に対する専門知識を持った医療従事者が治療にあたる必要があります。
今、病気や薬の基本知識を持ち、それぞれの分野の専門性に長けた医療スタッフの存在が求められています。
薬についての専門知識を持ち、医師が処方した薬を提供したり管理したりする人を薬剤師と言いますが、その中でも、緩和治療を専門としている人を「緩和薬物療法認定薬剤師」と言います。資格を取得するには、日本緩和医療薬学会が行う認定試験に合格する必要があります。
受験資格として、「5年以上の薬剤師の経験」「学会発表を2回以上行っている」「緩和病棟などで勤務経験が3年以上ある」などが挙げられ、資格取得には厳しい条件をいくつもクリアする必要があります。病院や薬局で働きながら受験することは大変な労力ですが、介護施設やホスピス、在宅医療などが増えている背景から、緩和医療が重要になってきています。
それぞれの分野の専門性に長けた医療スタッフの存在が求められています。
医療の発展によって病気の解明が進められると同時に、治療が複雑化、細分化されている現状があります。そのため、医療スタッフにも、それぞれの病気に対して専門知識を持つことが求められています。そして、一つの病気に対して情報と知識を共有した医師や看護師、薬剤師が、一つのチームを組んで治療にあたることが大切とされています。
特に、高齢化が進み、自宅や施設で病気と共に過ごしていく人が増える中で、緩和医療はなくてはならないものであり、今後も必要とされてる医療分野です。緩和薬物療法認定薬剤師の仕事は「痛みを感じずに人間らしく最期を迎える」ことの手助けができる、魅力ある仕事と言えます。