転職すべきか否か将来を見据えた決断とは
薬剤師は年収が高いと言われる職種ですが、日本の平均給与水準よりは例年高めに振れているのは事実です。ただし働く内容によっては満足のいかない人もいるでしょうし、スキルアップができないことに不満を感じている人もいるでしょう。就職先があまりに多岐にわたるため、やりがいと収入面でのバランスが取れず、精神的に消化不良になっている人も少なくありません。新しい職場を求めるべきか否か、迷う資格者のためにデータをまとめてみました。
2020年までの平均年収推移は平均年収を2010年から見てみると、総体的には2019年までゆるやかな上昇が見られます。2019年度が561.6万円という数値になっていますが、これは10年前の518.1万円に比べて43.5万円のアップですのでよい結果と言えます。
ただしご存じのとおり新型コロナウイルスの感染拡大があり、今後の景気低迷によっては薬局やドラッグストアの経営にも悪影響が及ぶ懸念はあります。逆に需要の高まりもありますが、社会全体の経済が悪化すれば近年の流れが継続されるかどうかは不透明です。
男女間の年収差は少なく、男女ともに全職種平均を大きく上回っています。資格があれば性別は関係なく就ける職種であり、実際に女性中心の業界となっていることから出産や子育てなどのライフステージの変化とも両立しやすいのが大きな利点でしょう。
同じ資格者とはいえやはり経験年数は年収に比例しますので、経験年数が長ければ長いほど年収も比例して伸びています。スキルの成熟度を図ることが困難なため、従事した年月で捉えられるのは致し方ありません。経験3年〜5年が一区切りとなり、経験3年で業務スキル、経験5年でマネジメントスキルを認められる傾向があります。
そのためもっとも年収が高い時期は45〜55歳近辺がピークとなっています。企業規模でみると、従業員数10〜99人程度の中小規模企業がもっとも高く、次いで100〜999人程度の中規模〜全国チェーン展開企業が多くなります。
100人を切るのはおおむね3〜10店舗程度を展開する調剤薬局やドラッグストアですが、1000人以上抱える大企業より平均年収が高いのは意外でしょう。中小規模で623.3万円、大企業では540.8万円でした。
自分が10年、20年後にどうなっているか、どのような生活をしているかを明確に描ける人は、転職に成功しやすいと言えます。例えば一所で長く働き、着実に信頼とスキルを築いて年収アップしたいなら、目先の年収ではなく昇給制度が整っている大手企業への転職を目指すのが正解でしょう。
これに対し、すぐにでも独立するために40歳までできるだけ多くの薬局で学びたいなら、転職しやすく高い年収を得やすい中小規模を選ぶほうが近道です。自分がどうしたいか、将来どうありたいかによって転職の考え方は大きく変わります。
もちろん実際には、社会情勢などによって自分ではどうにもできない環境の変化はあります。ただ目指す先が定まっていないと、時代の波に流された挙句、岸にたどりつくことができないリスクがあることは認識しておきましょう。
10年、20年後の薬剤師としての自分がどうなっているかを明確に、まずはビジョンを描いてみてください。