在宅医療、介護の患者を薬学的視点で語るスキル
高齢者が人口の30%に迫るほどに増え続けていて、2025年には団塊世代が全員、後期高齢者になることが分かっています。こうした高齢化の進む社会では病持ちや要介護者の増えていくことは避けられないようです。当然のように医療機関や介護施設の世話になる人が増えるわけですが、どちらも収容能力が追い付かなくなっています。
病院や施設の収容能力増強から在宅型に方針転換高齢化と共に病持ちや要介護者が急増し、医療機関や介護施設を増強しても追いつきません。遂に、収容能力増強から訪問医療、介護制度注力に方針転換を図っています。そこで、在宅のまま家族などが協力しながら医療、介護を行う家庭も増えています。
こうした家庭には病持ちや要介護者の症状などに応じて地域包括支援センターや保健所、及び医療機関などの連携により24時間医療、介護体制を維持している自治体が増えています。こうした連携グループには医師、看護師や介護士、あるいは理学療法士など、様々な資格を持った専門職種の人が加わっています。
在宅医療、介護では患者などの症状に応じて必要な専門職種の人が派遣されるわけです。
薬剤師は元々、薬局やドラッグストアで医師の処方箋に基づく調剤を行って患者などに服薬指導する業務を主としています。ところが、在宅患者のもとへ出かける場合は世話をしている家族などにも服薬指導することになります。
特に、患者が高齢になったり、認知症気味になるにつれて決められた服薬をするには看護師と連携し、家族とコミュニケーションをとる必要性が高くなります。在宅患者の場合は薬局などで調剤し、一通りの服薬を指導して済むのとは事情が大きく異なります。
意思疎通を図る作業が必要になるわけです。それには本人や家族の抱える不安や悩みに寄り添う会話で信頼感を持ってもらう位にならないと誤解なく服薬してくれる保証の限りでありません。
これは一朝一夕でできるものでなく、患者らの心理面迄考える素養が要求されるわけです。臨床面に強い薬学の専門家として生かせる仕事づくりの一環で平成16年に薬科系大学や専門学校が4年制から6年制に変えた事情の一つがここにあるといわれています。
学部、学科の増加などにより20年ほど前から薬剤師の国家試験合格者が毎年8千〜1万人も輩出されています。これだけ多数の資格所有者の就職口が最近まで薬局などの店舗増加で吸収されていましたがそれがほぼ飽和状態になっています。
今後も国家試験に合格して薬剤師の資格を取る人が続いていくとすれば資格を生かせる仕事づくりが必要でしょう。それには、在宅医療、介護現場で見られるように様々な専門職種の人たちの中で患者の症状などを見て薬学的な視点で意見を語れるスキルが新たに必要になっています。
その意見を患者や家族に分かりやすく説明して理解してもらえるスキルこそ新たに育むべきだということでしょう。